『ねごと』をいう時間は終わった。

ねごと。かなり好きなバンドだ。

彼女らはギター・ベース・ドラムにキーボードとかなりスタンダードな編成。しかしねごと独特の世界感や楽曲のレベルは目を見張るものがある。アルバムを出すたびにねごとのいままでと違う面が現れる。ねごと本人らも「夢の中なら何でも歌える」というコンセプトの下でバンド名付けたようだし、名は体を表すがごとく、彼女らの楽曲は日々内容が変わり、新鮮に映る夢のようであった。

 

僕が初めてねごとを耳にしたのが「機動戦士ガンダムAGE」2ndシーズン(アセム編)のOP楽曲、『Sharp ♯』である。

 

当時、いたいけな少年だった僕はなんてカッコいい曲なんだと録画を巻き戻しては聞き返しまくっていた。なんならこの曲のおかげで僕は毎週ガンダムAGEを欠かさず見ていたぐらいだ。そしてアセム編が終わると視聴をやめた。

なんなんだろう、この釈然としないんだけどキッチリストーリーが描かれたような歌詞。しかもこのスピードと宇宙感に溢れていてパワーを感じる。

僕は一瞬でこの曲に、ひいてはねごとに強く興味を持った。というか、単に「一瞬」のことを「ストロボの時」と言い換えるセンスに惹かれたんだと思う。

 

ねごとの曲には飛び道具が非常に少ないことも僕の好みだった。せっかくキーボードで多彩で変な音を出せるのにそれをほとんどしない。もちろんアクセントになる音はあるが、「変な音でしょ?」という押し付けがましさが無い。(変な音は大好きだけど。)

どれも世界観がカッチリしていて実直な曲は非常にバランスがいい。スピッツの「空も飛べるはず」と、サンフジンズの「じょじょ」のカバーも原曲の良さは殺さないままにねごと感を盛り込んできたしすごいんだよ。あとド素人耳で聴いてドラムの音が凄く心地よくて好きなんだよね。

 

そして時が進むにつれ、ダンスチックな曲が顔を出してゆく。キーボード要素が現代のムーブメントに合わせて進化していった。もちろん今までのねごとそのまま。

10代のアーティストのみしか出場することのできないフェス、「閃光ライオット」で賞を受賞したり、G-SHOCKが開催するイベント「G-SHOCKファンフェスタ」にもSKY-HIなどと一緒にお呼ばれするなど実力は十二分に持っている。

ダンスチック満載の曲。クソカッコいいでしょ?


一般の方には「LISMO!」のCMソング「カロン」が最もしっくりくるかもしれない。

(リスモ懐かしいね…)こちらは非常にストーリーがわかりやすい。曲名の「カロン」とはギリシャ神話に登場する、死者を冥界へと送る舟守のこと。きみはもう居ないのだ。会えない悲痛を表した曲である。PVもかわいい。

 

とにかく僕はねごとが好きだし、2017年にアルバムを出していたので、当時は(そろそろ新譜くるかな…)と心待ちにしていたところだった。

 

 去年のクリスマスを過ぎたあたりに、彼女らが解散発表をして酷くショックを受けたのを覚えている。

 

なんでだよおおぉぉぉ……

友達と飲みに行こうと電車に乗ったあたりでこの発表を目にしてそのあとの記憶はほぼない。多分酔ってた。

 

お知らせツイートにはこう書かれている。

デビュー10周年を目前に控え、メンバーでバンドの今後について幾度も話し合った結果、この4人でできることは精一杯やりきったという結論になりました。

そんなことないよ!!作詞も作曲も才能溢れんばかりに進化してきたじゃないか!!!

ねごとはメンバーの一人が主導して活動してきたバンドではない。作詞と作曲を手掛ける人はそれぞれ別だったし、それぞれが音楽にどっぷり漬かってきた経緯があった。

それが消えるってことは二度とねごとの世界とお目にかかれないという事じゃないか。あああああ!!そんな!!!

 

恥ずかしながら、僕は人生経験に非常に乏しい。僕は好きだった音楽グループが解散するのを初めて目の当たりにした。

SUPER BUTTER DOGとか、tacicaとか、キリンジとか。バンドやメンバーの危機は僕が好きになる前に過ぎていることが大半で、知った頃には(そうだったのか…)(残念だ…)で終わってしまうものだった。

それが今回の発表である。ぬるま湯に浸かってた僕には相当に耐え難いものだった。

 

そしてついに2019年7月20日、ラストツアー最終ライブを終了しついにねごとは解散してしまった。そうか。僕は行けなかったけどきっといいものになったろうな。

 

カロン」。この曲がラストツアーの最終曲として歌われたと聞いたとき、なんてものを最後に回すんだと僕は涙ぐんでしまった。だって「なんど夢をくぐっても」二度とねごとには会えなくなってしまったのだから。

すでに朝になってしまったのだ。ねごとをいう時間は終わってしまった。なんて粋で残酷な選曲なんだろう。

僕はなんて贅沢なものを聴いていたんだろう。2度と実現しない世界感に僕はずっと触れていたのだ。メンバー一人を追っても実現しない世界。残念で残念で仕方ない。

 

ただ、ねごとのファンになるのはいつでも遅くないのだ。


もしねごとに興味をもったなら最初で最後のベストアルバム、「NEGOTO BEST」を手に取ってみよう。

ここにはねごとの魅力やメンバーの思いすべてが詰まっている。これさえ聞けばねごとを語るに十分すぎるだろう。

アルバムなら「5」と「SOAK」が非常におすすめだ。