『BioShock』を愛してやまない【推薦】
海底二万マイルは好きか?
そう、SF小説…というか、ディズニーシーにある同名のアトラクションだ。
あのアトラクションが好きだ。それに僕はピュアであった。高校生になるまでマジで水の中に潜っていると思っていたのだ。
考えれば安全面とかメンテナンス的にそんなこと不可能なのは当然っちゃ当然なのだが、やはり夢のオリエンタルランドパワーを信じたかったし、実際に潜っていると思うと言いようのない感情が僕をいつでも少年に戻してくれた。
そんな海にちょっとした憧れを持つ僕が好きで仕方がないゲームシリーズがひとつある。
『BioShock』である。
深海、潜水艇、未知の生物……。ニ万マイルの雰囲気が好みな人間にはこのゲームが絶対刺さるはずだし、興味が無くてもこのゲームをプレイする価値はきっとある。
恐縮だが…時間があればこの記事に目を通してほしい。
ようこそ海底都市ラプチャーへ!!
なんと言ってもBioShock最大の魅力は舞台となる海中都市、「ラプチャー」の景色だろう。窓越しに見える海中の街並みは圧巻としか言う他ない。
飛行機の墜落から生き残った主人公はふと目の前に現れた灯台を通じてこの都市へ迷い込むことになる。そこでは50年代のアメリカを彷彿とさせる意匠やファッション、また都市建設を納得させてくれるオーバーテクノロジーをゲーム中のそこかしこで見ることが可能だ。
「Unreal Engine」で構成された美麗なグラフィックは数年前のゲームであるものの目を見張るモノがある。煌びやかなビルヂング、揺蕩う魚たちや鮮やかな海草。一級品の水表現。そして死体。文句なしのロケーションじゃないか。
死体…そう、何を隠そうBioShockのジャンルはホラーFPS。進むには銃を撃つことだ。
栄華の限りを過ごしたラプチャーの現在は外観からは想像もつかない程崩壊してしまっている。「ADAM」という遺伝子物質を狂い欲する住民たちがそこら中に潜んでいるからだ。
スプライサーと呼ばれる彼らはADAMを過剰摂取した影響で異形と化しており、精神も崩壊してしまっている。虚空に話しかけ、奇妙な歌を歌いながら主人公に襲い掛かってくるのだ。カミハオレヲアイシテル…
ホラーゲームと言いはしたが、それでも昨今のゲーム…例えば『バイオハザード7』レベルで怖いかと言われればそうでもない。
このゲームはあちらとは違って孤独ではない。登場するキャラクター達がラプチャーに関する話を次々としてくれるため、恐怖の感情よりプレイヤーの興味が物語や設定にどんどん潜航していくのだ。
特に主人公がラプチャーにたどり着いた直後に出会うことになる「アトラス」というキャラクター。
彼が主人公にモノを頼むときは必ず「恐縮だが…(Would you kindly?)」と丁寧に頼んでくれるのだが、水と狂気で満たされたこのラプチャーにおいて彼の大胆ながらも低姿勢な言動は非常に印象に残る。
なんてことないことも丁寧に頼まれるのでなんだか従いたくなってしまう。ラプチャーの説明をしてくれたり家族思いな点も好感が持てるしね。
基本的に主人公はラプチャーに偶然迷い込んだ人間で、なんのも目的もない。そのため彼から指示を貰ってライアン一家と共にラプチャー脱出を目指すという「おつかい系ゲーム」であることはここで言っておこう。ゲームなんて大抵おつかいだが。
彼の他にも、ラプチャー創始者のライアンや狂気の芸術家サンダー・コーエンなど、魅力的なキャラクターが盛りだくさんである。
彼らや住民がどのような思想でラプチャーを作り上げ、暮らしていたか。それは各所に点在する収集物「ダイアリー」で知ることができる。煩わしい読み物などではなく音声で聞くことができるレコーダーなので積極的に聞いておこう。
そしてBioShockを語るうえで「ビッグダディ」の話題を避けて通る道理は無いだろう。
彼はゲーム内で最もアイコニックな存在だ。カッコよくも不気味なビジュアルは世界観に合致しているし、設定も豊富。そのうえ体力の多さや攻撃性能はもはやラスボスより上だ。
コイツはとにかくカッコいい。この鉄臭さと鈍く光るヘルメットは理屈でなくフィーリングでビシバシと少年心を刺激してくる。
リトルシスターという少女を守るためにヤツは行動している。危害を加えなければ威嚇をしてくるだけだが、ひとたびレンチで小突こうものならドリルアームを回し、図体に見合わないスピードでプレイヤーを殺すまで執拗に追いかけてくる。その様子は「青鬼」とか「OUTLAST」を思い出させる。
しかしこちらが持っているのはハンディカムではなく銃、抵抗は十分可能だ。それに攻撃する方法は銃だけではない。
このゲームが面白いのはスキル要素があるFPSであるという点。電気を発したり、サイコパワーで物を投げたり、敵を催眠状態にするなど、「プラスミド」という左手に宿る超能力がこのFPSを面白くしている。
ゲームの舞台は海中都市。全編を通して屋内で過ごすため、マップは入り組んでいる上に非常に狭い。一見戦いづらいように感じるが、そこでこのプラスミドが活きてくる。
電撃を水に与えれば水中の敵に伝播してダメージを与えてくれるし、オイルに火を灯せば広範囲に敵を焼き払うといったように、様々なオブジェクトや能力を利用した戦略性の高さを楽しむことができるのだ。
そのほかに移動速度や回復量を上昇させたり、敵から発見されにくくするなど、数多くのスキルが存在している。どれを付け、なにを外すかという組み合わせを考えるのも今作のキモだ。
見事ビッグダディを倒す事ができればシスターからADAMを手に入れる事ができるだろう。主人公にとってもADAM由来のアイテムであるプラスミドを扱うためには必要なモノなのだ。
『Bioshock』は魅力たっぷりの名作FPSだ。やるゲームが無くなった時にはぜひバイオショックシリーズをプレイしてもらいたい。
FPSとしては少々古臭い部類ではあるが、このゲームは唯一無二。この海底都市という舞台を一人でも多くの人に味わってもらいたいのだ。
シリーズのシナリオはどれも一級品。ストーリーは例外無く難解だし、展開は僕たちを焦らしまくるが初見でもしっかり楽しめるのがこのゲームの凄いところだ。王道ながらも様々なところに仕掛けが張り巡らされた秀逸なシナリオは鉄砲水に撃たれたような衝撃を感じること請け合いだろう。
ラプチャーとは一体なんなのか?なぜ崩壊してしまったのか?ビッグダディの正体とは?墜落現場付近に都市への入り口があったのは偶然か?そして誰もが口にするフォンテインとは何者なのか?
謎は尽きない…。
恐縮だが、ゲームをクリアした暁にはぜひ2周目を遊んで物語の全容を掴んでほしい。物語冒頭の何気ないシーンや音声がストーリーの根幹に関わっているものもある上、内容が明かになったことでラプチャーの世界観、人物の思想も掴みやすくなっているはずだ。
手に入れられなかったプラスミドや武器を試してみるのもきっと楽しいだろう。
…さて、このゲームについて書いた理由は他でもない。当シリーズの主人公、ブッカー・デュイットに声を当てていた声優、藤原啓治氏が亡くなってしまったからだ。
ブッカーというキャラクターが僕は大好きだった…、本当に惜しい。そして何をやってもこの穴は埋まらないだろう。
便乗するような流れになってしまったが、彼の訃報を受けてどうしてもイチからシリーズをやり直したくなったのだ。この並々ならぬ思いを帳消しにするのは難しい。しかしゲームの魅力を再確認したり、ブッカーに触れることは何回でもできる。新作が出るなんて話も聞いたしね。
結局のところ、人間と奴隷の違いはなんだ?金か権力か?
いや…人間には選択することができるが、奴隷は従うのみだ。
アンドリュー・ライアン
あなたはこのゲームで人間と奴隷、どちらになる?きっとゲーム内の”ある決断”が自身を、ラプチャーを、そして世界を救うことになるはずだ。
余談として、僕の各作の評価に関しては
ストーリー性は 1 ≒ infinite(3) >> 2。
戦闘の楽しさは 2 > 1> infinite
なのだが、ストーリーに関しては1とinfiniteが面白すぎるだけで2がつまらないわけではないと強調しておきたい。