『Cyberpunk2077』に化かされているのか?【感想】
ついにきやがったこの時が。
サイバーパンクという世界観。僕は「AKIRA」とか「攻殻機動隊」とか。ましてや「ブレードランナー」すら見たことがない。強いて言えば『VA-11 Hall-a』をやったぐらいのもの。あとマトリックスは観た。
しかしどんな世界感であるかぐらい知っている。雑多な町に雑多な人体、やりすぎな程の階層社会にロマンを感じない人間がいるか?いないはずない。確かに僕は名だたる名作は観ていないが、しかしもはやそんなことはどうだっていいのだ。サイバーパンクという情熱は誰にだって止めることはできないのだから。
もうこのゲームの概要は省く。恐らくこのゲームをプレイする人たちは僕と同じように延期を味わい、その間にゲームの情報を漁っているからだ。絶対「Night City Wire」見たでしょ?僕も何回も見たもん。見てない?見てから来てくれ。
…とはいいつつ新規の人向けにネタバレ控えめでコンテンツをオススメするブログなのでザックリとだけ紹介しておく。
レトロフューチャーな2077年の世界で成り上がるため、脳内にキアヌ・リーヴス(が演じるキャラ)を飼ったVという主人公を演じながら無法の街、ナイトシティで成り上がるというオープンワールドRPGゲームだ。
TRPGを原作としたゲームで、サイバーパンクという名の通り冒頭で並べた作品のような世界感を楽しむことができる。幾度も延期を繰り返してなお2020年最大の期待を寄せられたゲームと言って差し支えないだろう。
コイツは5ヶ月 7ヶ月 8ヶ月の延期を経てやっと僕の手もとに届いた。幾度となく延期が発表されついには12月。タイトルの発表は2012年からあったようで…そこからチェックしてた人マジでお疲れさまでした。NKT…
1年間も延期の呪いに縛り付けられたのだから楽しくないってことはあり得ないだろう?生半可な出来なら待った甲斐すらなくなってしまう。今作に向ける僕の目は厳しい。僕は2077年現在全米で最も住みづらい都市ナイトシティに定住するのだから。
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今作の舞台となるナイトシティが文字通り怪物級のマップであることは言うまでもないだろう。巨大なビルが立ち並ぶ都市部にはギャングと汚職で。工業地帯は煙と排水に。街から出れはサボテンと安い車でひしめいている。このナイトシティは架空の世界。しかしその場所やオブジェクト一つ一つが強い説得力を持っているため世界観の構築という意味としてのマップは他のゲームと比べても雲泥の差が存在している。圧巻だ。
その広くない代わりに(それでも十二分に広いが)縦方向への密度を高めたマップは何度訪れても既視感を感じさせることが無い。普段通る場所でも来た方向が変わるだけで印象がガラリと変わるのは現実でも存在するが、ナイトシティではそれを何度でも感じることになる。こんな感覚をゲームで味わうのは初めてでそう感じさせてくれているのはやはりナイトシティが持つ密度のお陰なのだ。
いつも通る場所のそばにエレベーターや階段があることに気づくというのは日常茶飯事でいつだってプレイヤーに発見の連続を与えてくれる。屋根を登った先、ビルに飛び移った先、エレベーターに乗った先。二度と訪れることは無いであろう場所も想像以上に作りこまれているし、見慣れた巨大なビルは角度を変えるだけで大きく表情を変え、いつだって僕たちの目の前に現れてくれる。
何かに気づき、その先に見える景色を楽しむという行為は『ゼルダの伝説BotW』にも似た感覚を呼び起こさせてくれる。その先にコログが無いことはわかっているのにどうしてここまで歩くことをやめられないのだろう。
二段ジャンプのサイバーウェアはマジでオススメ。というかこういう楽しみを得るには必須。
この『BotW』のような体験は何度も言う通り立体的なマップ構造によるものだ。どのようにそこに向かうか、どの方向から訪れたかでたどり着くまでのプロセスが大きくかわるためナラティブ性のあるマップが作り上げられている。
それは散策だけではなく戦闘についても同様で、どのルートから攻めどのように引き上げるかは能力値も関係するため、より深い個々の体験を得ることができるはずだ。(戦闘の頻度とか大味さは一旦置いておいて。)
とにかく散策がめちゃくちゃ楽しいのだ。キレイな公園の端に隠されたゴミ山。巨大な施設やタワーの周りにある飲食店。路地裏にある血痕を見つけるたびにナイトシティがどんな場所なのかをコントローラーを通して全身で感じることができる。
エレベーターだってわざわざ扉を金網にして移動している様を見せてくれるし、高所に向かうソレではマジで長い時間をかけてその階まで上るなど本当にエレベーターで移動しているのだ。この移動の楽しさはなんなんだ…?どうしてなんだ…?
ナラティブ性のあるマップ、でかいビルとはいえそれだけではナイトシティは完成し得ない。特筆すべきはナイトシティ中に散らばる広告や文字や住民の装いだ。
トーク番組で流れる話題。炭酸飲料やエナジーバーのCM。ギターであの名曲を弾くオッサン。極彩色の服に身を包んだ女性。背景でサラリと流れてしまうひとつひとつがどれも2077年という時代やナイトシティという都市を読み解く足がかりとして大きなウェイトを占める要素であり非常に美味しい。美味しいのだ。(大事なので2回)
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そしてそんなマップとともにに繰り出されるミッションはマジでヤバい。メインミッションは下手すれば1、2時間は平気でかかってしまうような(その半分がドンパチだとしても)大ボリュームだ。ただメインミッションは「キアヌチップvsV」という構図を描くだけで、ドラマチックではあるものの面白い部分はそこまで担っていない。
真にヤバいのはサブクエストだ。Vに密接に関わるストーリーやメインキャラのその後が展開されたりするので本当に気が抜けない。これサブクエで良いのかよ!?という驚きは尽きない上、早撃ちを競ったりタクシーを追いかけたり歯が立たない相手に立ち向かわねばならなかったりするなどミッションの物量に応じてそのどれもがバラエティ豊かだ。
このゲームもオープンワールドスタイルにありがちなマーカー先でクエストを受け、次のマーカー先で戦闘をするような「おつかいゲーム」であるわけだが、クエストのストーリーラインは全くワンパターンではないし、そこからさらに発展する話もあるため随所に飽きさせない工夫が施されている。
演出一つとってもインプラントのエラーや目線の誘導など非常に秀逸で一人称視点であるという事の重要性は嫌というほどわかるはずだ。
とはいえサイバーパンクの売りの一つである「多岐にわたる物語」は実際あまり感じる事ができ無かった。
一部では分岐に関する力の入れようがひしひしと伝わってくるのだがそれを感じるのは一部ミッションであり、それ以外のほとんどは戦うかステルスか、話し合いで解決するか程度の選択しか設けられていない。それに加えて主人公の出自によって異なる会話をを選択しても劇的な変化をもたらしてくれるようには感じないのだ。デトロイトのようなバタフライエフェクトも極一部で、なんだか「レール上の自由」感は否めないように思う。
ストーリーの他にも車がプッシュされているのにレースが極端に少ないとか、ソロとネットランナーの他に「テッキー」というロールがいつの間にか消えていたりとか、電車が無かったりとか、「これもしかして本当はもっとああしたかったんじゃないか……??」 みたいな場面に遭遇する瞬間は非常に多い。実際その名残をゲーム内の随所で見ることができる。
実際に細やかな分岐が設けられているのかどうかは周回プレイをしていないため真偽はわからない。もしかしたら僕が気づかないぐらい分岐が自然であっただけなのかもしれない。(恐らくこちらが正しい)しかし「分岐する」という確実な提示が無ければ肝心な周回する意欲は薄れてしまうように思える。
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ていうかサウンドトラックがヤバい。マジでヤバい。ラジオはやらBGMのほとんどがテクノ、ロック、ラップなどめちゃくちゃ好戦的な曲ばかりで構成されている。町中やカーステレオで聞こえる楽曲達はすべてが印象的でクール。しかもその大部分がこのゲームのために書き下ろされたというんだから驚きだ。ヤダァ ウソォ ホントォー?
いやマジでラジオで留めておくのもったいなくないか…?もっといろんな場所でガッツリ効果的に使っていいレベルでどの曲も高クオリティでカッコよくて多種多様だ。
特に戦闘曲はめちゃくちゃクールだ。
こんなのが流れてくるんだから戦闘時のボルテージは上がりっぱなしだ。
僕だって他人よりはゲームを遊んでいる自身があるけどここまで大規模なゲームのサントラで微妙に思える曲が無いことは稀有だ。サントラだけでも聴く価値のあるゲームであることはここで強調させてほしい。
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で、だ。サイバーパンクを遊ぶに際して発生するバグや動作不良に関する話題は避けて通れないように思う。
実際遭遇するバグは縁石程度で落下死したりチュートリアル表示が再起動するまで居残り続けるなど没入感を損ねるものばかりだ。そして何より落ちる。アプデが入って頻度は落ちたがそれでも落ちる。(12/30当時)その上僕はPS4版でプレイしているためフレームレートはガタガタだし画面はぼやけている。
正直ここまで不具合や最適化が進んでいない部分が多いとげんなりしたりムカついたりする瞬間は往々にしてある。ここまでやられると「現行機向けに発売する」という発言も延期報告などを見るにあまりに薄っぺらい言葉に感じてしまうのも事実だろう。タケムラの無言電話バグは大好きだけど。
ただ、なんというか、このゲームをやって明らかになったのは『僕は』画面のぼやけやfpsの低さはさほど気にならないという事だった。ガッツリ私事な上に完全に気にならないわけではないのだが、とにかく僕はそうだと浮き彫りになったのだ。オフゲーに限るが。
元よりこの物量と度重なる延期を見て不具合が無いことを期待するプレイヤーが果たして存在するのだろうか。ゲームに少し詳しければある程度予想できることに加え、恐らくこのゲームを手に取る人はマニアかそれに片足突っ込んでる人ばっか…ですよね?
そもそもゲームの評価にバグだの不具合なんて考慮したくないんですよ僕は!!不具合がそんなに気になるならリニアゲーだけやってりゃいいのだ。しかしそんなこと言うほど僕らのゲームに対する熱は冷めてない。ただでさえ昨今のゲームは肥大化してるのだから大小のバグ程度発売後に修正すればいい。少なくとも僕はそれを認めてるしそれを許せる世の中であって欲しいと思っている。雑な擁護をしてしまったか。
『ウィッチャー3』だってリリース直後はなかなかバグが多かったという話を小耳に挟んだことがある。それでも『ウィッチャー3』が評価され、今作に期待が寄せられたのはグラフィックやバグを越えた先にある部分では無いのだろうか。(僕は未プレイ)
ただ今回でその手の反省が生かされてない上に問題のある開発方法を行ってしまったことからは目を逸らすべきではないのだと思う。
ゲーマーの皆様
— CD PROJEKT RED Japan (@CDPRJP) 2021年1月13日
CD PROJEKTの共同設立者より、『#サイバーパンク2077』の発売に至るまでの開発の様子についての見解および、旧世代機版についてのスタジオの見解をご説明しています。 pic.twitter.com/fQW11rgqIq
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最終的にこの『サイバーパンク2077』というゲームは絶賛できるか?毎日ポンポンしたいか?と聞かれれば、僕を含めほとんどのユーザーが「2020年を代表するゲームの一本だが傑作ではない」と答えるだろう。
今作の物量はすさまじい。散々言われているが悪いゲームではないし、不具合を差し引いても胸を張って人にオススメすることができるゲームであることは間違いないのだ。何度も言うがマジでマップが素晴らしい。ナイトシティ大好きだ。しかし悲しいかな、僕は今作にそこまで入れ込むことができなかった。
それはこのゲームに存在する空白のためだ。時間か容量の原因によって切り詰めてしまったのか、そもそも消してしまったのか。どちらにせよ無数のコンテンツの名残によってその空白部分が確実にプレイヤーを蝕み、なぜだか物足りなさを感じてしまうという不遇なゲームなのだ。
繰り返すが今作の物量はすさまじい。その上面白い。ただ『Night City Wire』の映像や言葉を額面通り受け取るとCS版でもPC版でも手痛いリターンが返ってくるように思えるので、過度に期待は避けたほうが良いのかもしれない。
しかしその先にある世界(主にマップ)に魅了されることからは避けられない。ザックリとは言えロードマップも公開されたので本作の真の評価を決めるのは『ウィッチャー3』同様にアップデートやDLC配信後でも遅いという事は無いだろう。多分。おそらく。