『Digital Rain』/西島尊大
「この人何者なんだ…」という感情が聴くたび浮かびあがる。頑張って調べてみるが結局いまいち核心にたどり着けない人物、それが西島尊大。そもそも検索して得られる情報以上のことなんて無いのかもしれないが。
彼を知ったきっかけは『Digital Rain』。上質なインストだ。
僕は一瞬で聴き惚れた。すさまじく良い曲じゃないか。丁寧に作られたテクノジャズでどのフレーズも非常に洗練されすぎている。
盛り上げ方と曲全体のテンションが絶妙で、近代的なテクノではあるがサブカル臭さは感じない。ベテランアーティストが丁寧にテクノを作ったお陰でかゆいところに手が届いてる、みたいな気持ちになる。
「いいなこの人…」そう思っていた最中、実のところ西島尊大はボーカロイド曲をメインに製作していると知った時はあまりの衝撃にぶっ飛んだ。だってこの曲、テクノではあるけど全然ボカロっぽさはないんだもん。
単にインストだからそう思わされたのかもしれない。でもそれを差し引いてもボカロ…?ここから?マジで?
なら…とそちらも聞いてみると、これまたぶっ飛んだ。『Digital Rain』とは打って変わってめちゃくちゃにユニークかつ高度なことをサラリとやってのけているじゃないか。曲調も様々でそのどれもがカッコいい上にやっぱりボカロっぽくない。
具体的にはジャスとかオーケストラ音楽の空気感だ。『1009転調』とかユニークさの最上位で、マジで何者なんだと検索するがやっぱり核心にはたどり着けない。動画サイトの再生回数は1~2万いってりゃいいほうで、その上動画概要欄にはほとんどなんも書いてない。
待ってくれ、この人は本当に生きてるのか…?そもそもなんでボーカロイドを…?怖い怖い!!実は大物アーティストが片手間にやってるプロジェクトじゃないだろうな!? ウェブサイトのアー写は信じないからな!!
謎は尽きない。しかしこの匿名性……僕は完全に西島尊大の虜になったのだ。というか彼が何者かどうしても気になってしまうのは明らかに『Digital Rain』から知ってしまったせいだ。完全に入り方間違えたね…。