『きかないで いわないで』/Rails-Tereo
この曲のシンプルなメロディに歌詞。そして王道な進行はまさにザ・J-POPと言って差し支えないだろう。
突飛な展開も無く、まっすぐと伸びたポップス道は、シンプルと言えど「ペラい音楽」では無い。体にスッと染みてくる単純明快さが良いのだ。
この曲は特に歌詞が面白い。
「今までどんなひとを
ねぇ 愛してきたの?」
日の当たる昼下がり
君は悪戯っぽい顔をして僕を見た
『きかないで いわないで』/Rails-Tereo
なかなか面白い歌詞だ。大抵なら「僕の苦しい過去」はぼかされて語られるのに、なんとキミは単刀直入に聞いてくる。こんな具体的に過去に触れる曲がかつてあっただろうか。
それにこの曲の主人公はこう答える。
きかないで きかないで
もうそんなことは
今の僕を愛して欲しい
このままの
『きかないで いわないで』/Rails-Tereo
逃げまくっているのだ。
都合が悪いのかうっとうしいのか、女性経験が無いと悟られたくないのか。
とにかく「聞かないで」と懇願してしまっている。僕からも頼むよ。
この逃げの姿勢がガッツリと出る曲がかつてあっただろうか。興味深い。
君の唇に触れたことがある
僕の知らない誰かのこと
気にならないと言えばウソになる
だけどね
『きかないで いわないで』/Rails-Tereo
2番の歌詞だ。
「気にならないと言えばウソになる」。まぁその気持ちはわかる。
でも気にしている素振りは見せないし、口には出さないのだ。だって失礼じゃないか。
でも「だけどね」とは…?
いわないで いわないで
もうそんなことは
今の君を愛している
そのままの
『きかないで いわないで』/Rails-Tereo
うわっすっごい話してくるよ向こうから!
違う違う!気になるけどそういうのじゃないから!
別に知りたくないのに向こうからズカズカと話し出してしまう。やめたげてよぉ!!
そんなちょっと、いやかなりすれ違った男女のやりとりがこんな聞き心地のよいサウンドに乗ってくるのだから本当に面白い。
五線譜に乗った状態だと当たり障りない歌詞なのに、文章でみるとどうしてここまで胸抉られるのか……。歌って不思議な力がありますよね。
でも大丈夫だ。ボクとキミは笑いあっているし、冗談交じりに答えあっている。そこまで仲が良いんだという歌なのだ。きっと…
この曲は悪戯っぽい(俗に「デリカシーが無い」と呼ばれる)キミと、その話題に振り回されるなんとも不憫なボクの話なのだ…